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09,09,13 14years  ときのこえ

​………彼が風邪をひいたって言ったのが一か月前。

​…………彼の声がおかしくなったのが今月に入ってすぐ。

…………彼の影が、違って見えたのが、つい、最近。

 

前みたいに「同じようにすること」はどんどん減っていた。

バレエのレッスンも、私は演目によっていったし。私の業務はもともと夜だった。

あなたは、補佐の仕事があって、忙しく、夜は倒れて寝ていた。

…………。

あなたの姿を見るのは、西日の中になった。

……。

夕方は苦手だった。

すべてが、燃えているように見えるから。

どうしても、呼び止めてしまうのは、きっとそのせいだ。

あなたは戦うための装備を付けるようになって、もっと大きく、

そう、怪物のように、なっていった。

私はそれを呼び止めた。あなたが、ゆっくりと振り返って、

武器を隠していた。

その時の顔で分かる。分かってしまって。

頭の中で、ふつふつと音がしているのを、私は、無視した。

そして、「あなた」を見ていた。

これ以上、何も起きないでほしかった。

「また、「カルメン」先輩に呼ばれてるの。」

「…………うん」

目線をそらした。そのまま、どこかに通り過ぎることがすぐに分かった。

またおいていかれるんだろうか。

ここにいるって、言ったのに?

「どうして、そんなかお、するの?」

「だって、…………。」

ごにょごにょ。

…………何を言っているんだろう。どうして下げるんだろう。どうしてそうやっておいていってしまうんだろう。どうして変わってしまうんだろう。どうして、あなたは、わたしの知らないものになっていくの。

………。

あなたも、わたしのことを、きずつける、なにかに、なってしまう?

それは

「…………わたしのこと、きらいなの?」

何かがおかしいのなんてわかっていた。きっと馬鹿げてるんだろうとは思っていた。でも、なぜかそうなった。

そうだった。

そうだったんだからそうなんだ。そうでないとおかしい。

あいつはわたしのことをずたずたにしようとしているんだ。

いやちがう、あなたはそんなこじゃない。

あなたはあいつらとは、わたしのこときずつけたひととはちがう。

いやおなじだ。かくにんできるものがそうじゃないか。

ちがう、ちがう。

だからこんなことかんがえたらだめ。

でもおかしい。かんがえたらだめなんてことはないはずだ。

どうしてわたしのあたまのなかまでおかしくしようとするの。

おかしくなんかないもともとそうだったじゃない。

おかしくしてるのはだれ。

おかしいのはだれ。

ぱっと、手を握られた。

目の前に、少し焦っていて、でもそのままの、あなたがいた。

「いいや。好きだよ。」

しっかりと、こっちを見たあなたは、そのままで。

………でも、手は、私よりも大きくて。

足がすくんだ。目をそらした。

あなたは。

………目をそらして、困り繭で、笑って。

「だいじょうぶ。」

それだけ、言った。

…………。

……。

…………。

「ほんとうに?」

…………だれかが、そういった。

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