21,06,10 Day8 お城の外には出られない
…………今日の当番は例の部屋で。
私は、改めてしっかり文章をよ……んで見たけれど結果として何も変わらなかった。
結局、同じことの繰り返し、見たいで。
ただ、読んだとき、この前より、少し手が動かなくなってしまって。
…………ああ、まだ、こんな感覚、残ってたんだな、なんて。思ったりして。
……。
レーテに、ばれないように、しなきゃ、なんて。
なんだか、とっても、…………
…………ははは。
そこまで含めて、私は、こうなるべき、なんて。
頭の奥が、ジーンとした。
私は知っている。
こっちが私にとっての現実だってしってる。
でも私は眠っている。
これらすべてが夢だって知ってる。
だから大丈夫。平気、平気だ。
いつか、目が覚めたら、今までのことなんて、全部。
ぜんぶ。
…………。
やはりいつも通りだった。
こんにちは、なんて言った時、貴方は前みたいに真っ赤な目をして私を突き刺して。
また、殺されるんだ、なんて思ったと気にはもう私は空笑っていて。
その顔にあなたはまた荊を振りかざして、何にも変わらない。
……痛みがあるだけマシで、それだけが真実で。
……包帯が上からまた、赤く、黒く、染まっていって。
まだら模様になる足を見て、
また、笑いがこみあげてくる。
首のあたりなんか、分からなくなってきて、
ついその様子に、貴方の変な文章を思い浮かべて、
こんな私を並べて、
「……あんたも加害者でしょ」
誰にも宛てない言葉。止まって、黒く染まっていくものを見ている貴方。
ギザギザな口が動いて。
「……おまえはここの化け物に
いちいち加害者って言ってるのか」
なんていう。正面のあなたを見ていることに気が付かない言葉だ。
足が軽快に私を切り刻んでぐるぐる、と巻き付いてリボンか荊かわからなくなって。
その言葉を、ラブレターにする。
「あんただからに決まってるじゃない。」
あなたはそれを簡単に切り捨てる。
バラバラになった手紙は私に簡単に突き刺さって。
「ああ、そう。被害者の恨みが募った存在なんて、ここにいくらでもいるのに」
私は答えなかった。
「……。」
お姫様からの文通を破り捨てるなんて、なんて。
とっても素敵な人だと思った。
また、貴方のその仕打ちを飲み下して、呪いを飲み込んで。
……これは、報いなんだって。すべて私の所為なんだって。
あなたが刻むんだって。
「……あはは。
……『ぎゅーって、して』」
けほっ、けほっ。首についたそれが私を巻き取って、それがまた私の白いワイシャツを、主演の衣装をピンク色に、赤を付け足しながら染まっていく。筋肉は白い骨よりもきれいに色を見せている。
頭がぼやける、嫌だ、いやだと声がする気がする。すべてを飲み込んでなかったことにする。
そうすべては夢で、夢の中で眠っているだけの私はお城の中にいるお姫様で、何も知らなくて、危ないものなんて周りになくて。
「……その、わざとらしい、えんぎを、やめろよ」
誰かと思ったら、目の前のあなたの声だった。
それにこたえるのは、私じゃなくて「お姫様」の仕事だ。
すべてを投げ出して、あなたの顔を見て私はしっかりとその通りにする。
何で止めるんだろう。
「どうして?……くすくす。
『だって、会いたかったんですもの。ずっと待っていたんでしてよ?』
……。」
あなたならわかってるんじゃないの、とか、思いながら。
ゆっくりまた、お姫様みたいに笑う。
口から、血液が落ちて、唇をきれいに赤く塗ってくれる。
………指でなぞったときに、また、飛ばされて、
「……。」
そしたら、貴方は黙ったまんま、いったんその荊をどかして、私を突き放して、倒して、うえからすべてを見ているかのように
「そんなことわざわざ言ってたのしい?わかってるくせに」
とげのある声色で、そんなこと。
そんなこと。
そのことばどおりに、首から、また、いつもの痛みが、飛び出して。
のどを割いたはずなのに、上手く話せる言葉が口をずたずたに引き裂いて。
「……くすっ…ゲホッ、ゲホ。
……たのしいか、……たのしくないかじゃ…ないでしょう?」
いきが、できなくて
……ひゅっ。
でも、言葉を生かして、殺されないように祈って。
お姫様がかってに私を殺すのを見ている。
「『意地悪な方ね』……ふふ、…………はぁ、……はぁ」
その荊はわかりきったかのように私を巻き付くようになって、ゆっくりと触れられて、私はゆっくりとなかったことになって。
………あははは!
これでいいんだ。これで。……いいの。
でも、
私を見た怪物は、すっかり、興が覚めてるみたいで。
「そう。そう思うのなら、きみに指示を出す人間に。加害するやつら、全員に言ったらどう」
なんて、突き放すんだ。舞踏会の相手を。
棘まみれの荊は、身体を這いずり回る。たたきつけるような痛みではなく、まるで、すべてを元通りにしてしまうみたいに。
「そんなの無駄だけど」
そして、軽くつけたして、
それが、痛いのに、痛くなくて。
壊してくれなくて。
「……ふふ、そうね。……ふふ、…あははは。」
それが、逆に苦しくて。近づけても、全然刺さらなくて。求められているものも分からないまま、結局何もしないのが最適解で。
でも、それは、普遍で。
……平坦で、…………何にも変わらないで済んで。
どこか、その通り何もないのが、当然で。
……。
かなしいのに、どこか、それでよかったんだって、おもえた。