99,03,11 ? years 即興演目の始まり
オーロラにはその日の記憶はない。
ただ、カルメンはその娘を見て、こういったらしい。
「……貴方。立ちなさい。」
そういって、すっくと立ち上がった彼女の背筋を感じた。
こんなに傷ついても、真っ直ぐな芯がある。
とっても良いじゃないか。
「……いい立ち姿ね。 大変結構。貴方は取っておきましょう。」
そういって、彼女はその日の業務を取り行った。
……その時彼女が雨宿りしていたとある店舗は廃墟となった。
協会が端の事務所として依頼していた気がする、と「ジーク」は語る。
そのまま捨て猫を拾うかのように「カルメン」はその子を事務所に連れて行った。
しかしながら、「カルメン」は子供が苦手だった。
と言うのも、彼女はその娘の状態が…子供なら当たり前だと思っていたのだ。
そのくらい都市ではありふれているし、なによりも彼女の環境がそうであったから、なのか、真偽はわからない。
「カルメン」は、ただ、
「ダメね。殺しちゃうわ。……ちょっと出てくるから」
とだけ言い残して、どこかに消えた。
数時間後、 彼女はとある女性を連れてきた。
「交渉してきた。今日から赤い靴事務所メンバーよ。基本的に礼儀作法によらせてもらうわ。」
そう言って、横の、一張羅を着た女性を「ジーク」に紹介する。
「……何か希望あった?」
「さっきまで取り行っていましたし。「くるみ割り人形」でよろしいでしょう。」 「じゃあ「クララ」ね。……」
「ジーク」は唖然とする、が、たしかに「カルメン」はこういう人なのだ。
……嵐のようにきて、勝手にして、去っていく。
「……よろしくね」
「よろしくお願いします。」
適当に挨拶を交わして、その後、すぐに業務で別れて。
「カルメン」は立ち去り、 「ジーク」は説明を行なって、ついでに他の設備紹介等もして、苦情やら案件探しやらをする。
「クララ」は、見た目的には巣の住民に近いように感じた。それにしては、荷物も少なければ愚痴も吐かず、変に順応しており、だからこそ「カルメン」も契約を結べたのだろうと「ジーク」は推測する。
あとは、小さなわからない少女が1人。
赤い靴事務所。
ただ、バレエ、という不思議な踊りだけが、ここの共通点として成り立っており、 この頃はまだ、夢も、演目も、そこまで強い想いはなかった。